高専国語におけるグループ学習
井上次夫
高専低学年における国語の授業では,通常,一斉学習が行われている。一斉学習は,高等学校の場合と比べ単位数が少ない高専国語にあっては最も効率的な授業形態であると言える。しかし,各方面からコミュニケーション能力の育成が強く求められている現在,従来の講義,説明,学習者との問答を行いつつ学習を進める一斉学習はそれらの要請に対してどこまで応えられるだろうか。また,今,目の前の学習者一人ひとりは常に目を輝かせ主体的,意欲的に国語学習に取り組んでいるだろうか。さらに,国語教師は学級での集団学習の良さをどこまで発揮させているであろうか。
本稿では,高専国語にグループ学習を適切に導入することにより,現代的ニーズが高いコミュニケーション能力を育成する場が与えられるとともに,学生一人ひとりの主体性が引き出され,学習内容の理解が深まり,授業が活性化することを示す。そのために,以下,グループ学習を取り込んだ授業の組織化,グループ学習の方法,そして評価について述べる。
なお,「グループ学習」とは学習者の立場から見た学習形態の用語であり,これは指導者の立場から見た場合,「グループ指導」ということになるが,本稿では特に両者を厳密に区別することはせずに用いる 注1) 。
2.1 グループ学習の位置 注2)
学習形態は学習者の規模によって大きく個別学習と集団学習の2種,または個別学習,グループ学習(小集団学習),一斉学習の3種に分類される。高専低学年の国語では通常,一斉学習(集団学習)が行われていることは既に述べた。ここでは,グループ学習がそれら学習形態のどこに位置づけられるかについて確認しておく。
まず,一斉学習では基本的に一人の教師が,同一の学習内容について,同一の学習指導法で行う授業の中で,1学級全員の学生が同時に学習を行う。教師は,講義や説明,学生との問答を行いつつ授業を展開するため,時間や労力が節約できる点で効率的である。また,教師は授業を組織しやすいため,教師の意図を学生に反映させやすく,効率的に高い学習成果が上げられるという利点もある。しかし一方で,そのような教師側からの発想により組織された一斉学習に偏ることは,学習の画一化・硬直化を生み出し,学生の学習に対する個々の興味や関心に十分に対応できず,往々にして学習への主体性の欠如,学習意欲の低下が現れやすいという問題点が指摘される。
次に,一斉学習に対置するものとして個別学習が挙げられる。個別学習では,教師が個々の学生の学習状況に応じた授業を行う中で,学生一人ひとりが学習を進めるため,学生の多様性に応じた個々の学習が成立し,その結果,基礎・基本の定着を図ることができる。しかし,学生一人ひとりの興味・関心や学習状況を十分に把握すること,その実態に即した多様な教材や活動を準備すること,学生自身が自己評価力を高め学習内容の深化を図ること,ティームティーチングの教授組織を整備すること等多くの課題が指摘される。
さて,グループ学習は,教師が学級の中をいくつかのグループに分け,学生はそのグループ(小集団)の中で学習を行う。教師側からの一方的な指導を受ける一斉学習でもなく,学生一人ひとりが教師から個別指導を受ける個別学習でもない。したがって,グループ学習は一斉学習と個別学習の中間に位置する学習形態である。そこでは,学生が共通の目標に向かって,相互に交流しながら学習に取り組む。そして,前提として個別学習が要求されており,個別学習の結果をグループ学習の中で話し合い,議論し,まとめていく。その際,必然的に次に示すような基本的コミュニケーションスキル 注3) が要求されることになる。
(1)自己表現のスキル:自分の考えや感情を相手に分かりやすく伝える。
(2)傾聴のスキル:相手の話を積極的に聞いて,相手の考えや感情を理解する。
(3)問題解決のスキル:積極的に意見を出し合い,建設的に批判し合って問題を解決する。
(4)対立解消のスキル:意見や利害が対立したときに,冷静に話し合って双方が合意する。
(5)調停のスキル:意見が対立したときに,第三者が双方の言い分を聞いて調停する。
以上の基本的コミュニケーションスキルを学生に主体的,意欲的に習得させるためには実際のコミュニケーション場面で学習させることが最も効果的であろうが,学習活動としてそれを教室内に求めると,グループでの話し合い,討議,討論という言語活動になる。その他,パネルディスカッション,シンポジウム,ディベート等も候補として挙げることができる。
しかし,それらの活動の実践には特別な事前準備,また,少なからぬ時間や労力が必要となり,平生の授業における学習活動という点からみると,それらは高いコストを要するため,ここでは取り上げない。本稿では,平生の国語授業に導入しやすいという簡便性(低コスト)を優先するからである。グループ学習の次の段階では,そこでの学習内容を学級全体による一斉学習の中で発表する。その後,再びグループ学習,そして個別学習へと戻ることで,学習内容の理解が深化する。以上の過程を図示すれば,図1のようになる。
図1 学習形態の組織化(1)
2.2 ペア学習の位置
本稿ではグループ学習を成員2人からなるペア学習と成員3人以上からなるグループ学習に分けて考える。これはペア学習が持つ機能を重視するためである。そこで,ペア学習を取り込み,図1で示した学習形態の組織を高専国語の実態に即すように再構成すると図2のようになる。
図2 学習形態の組織化(2)
図2での変更点は,第1に「個別学習」の後に「ペア学習」を組み入れたこと,第2に「一斉学習」後の「グループ学習」を省略し「個別学習」に戻って学習を終えることの2点である。
第1の変更の理由は,1人の個別学習から2人のペア学習への移行は学生にとって心理的抵抗感が最小限に抑えられ,次の段階である4人規模のグループ学習にスムーズに移行できると考えるためである。また,2人のペア学習は隣席同士で行える簡便な学習形態であることから日常的に導入しやすいということもある 注4)。
第2の変更の理由は,現場の授業では再度のグループ学習を行う時間的余裕がないためである。また,再度のグループ学習を省略しても最終的な個別学習における学習成果に大きく影響することはないと考えるためである。
さて,図2でのグループ学習は,事前に個別学習とペア学習が入り,事後に個別学習があって成立する学習活動であるので,以下,それら事前・事後の活動について説明しておく。
(1)個別学習:学習は基本的に個別学習でなければならない。したがって,学生は課題や設問に対して自らの考え・意見等の「個の解答」を持つことが不可欠である。それは,次の段階で行うペア学習,グループ学習の素材になる。
(2)ペア学習:座席が隣接する相手とペアを組み学習を行う。具体的には,「個の解答」を記入したノートを交換して読んだり,口頭で発表をしたりして互いに「個の解答」を伝え合う。そこでは,解答の比較・対照・確認が行われる。これは学習活動面からみると「個の解答」を持つという「易」の段階からそれを他者へ伝え相互に交流するという「難」の段階へのステップであると言える。また,学習心理面からみると「個の解答」をまずは持てばよいのだという「安心」からそれを他者へ伝え相互に交流するという「不安と期待」へのステップと言える。
(3)グループ学習:ペア学習の後,4人を基本とするグループで「個の解答」を発表するとともに,グループ成員のそれぞれの解答を聞く。そこでは,先に行ったペア学習における学習体験が生きる。これは学習活動面からはペア学習の段階で経験した「難」の段階からその経験をグループ学習で再度繰り返すという「易」の段階へのステップと言える。また,学習心理面からはペア学習の経験をグループ学習で生かして繰り返せばよいのだという「安心」へのステップと言える。
(4)一斉学習:グループ学習の後,代表学生が大集団である学級成員に対して「グループとしての解答」の発表を行う。その際,学生はグループとしての一体感を覚え,グループへの帰属意識が高まることになる。これは学習活動面からはグループ学習という「易」の段階からさらに大きな集団での発表という「難」の段階へ,学習心理面からは小集団の中で感じた「安心」から大集団に対して感じる「不安」へのステップと言える。
(5)個別学習:学級全体での一斉学習から再び個別学習に戻る。そこでは第1段階の個別学習から第4段階の一斉学習までを振り返り,「個の解答」の再検討を行う。最後に,これまでの学習活動と学習内容の深化についての評価を各自5段階の数値及び文章記述により行う(4章参照)。
以上,見てきたようにペア学習,グループ学習は,学習形態の組織化において個別学習と一斉学習とを円滑に連結する機能を果たす。
ここでは,高専国語におけるグループ学習の方法について具体的に検討する。
3.1 話題
グループ学習は,教材の表現内容の必然性から求められる学習形態である。よって,グループ学習で扱うに足る内容・話題がなければ実施する必要はない。例えば,漢字の書き取り,指示語の内容といった学習の場合には一斉学習で事足りるだろう。しかし,例えば,夏目漱石「こころ」の学習でKが自殺したのはなぜかを考える,表現学習で不適切な語や文に気づき,それを適切なものに書き改める,古典での群読の学習,漢詩の研究発表等であれば,グループ学習が必要かつ適切であり,効果的である。というのは,それらの内容・話題は学生の疑問や興味・関心を強く引き寄せ,さまざまな解答が出現するものだからである。3.2 時機
グループ学習は,時機を捉えて実施する。3.1で述べたように教材研究によりグループ学習が必要だと教師が判断した場合のみならず,例えば,一斉学習がマンネリ化しており授業に刺激を与え活性化を図りたいとき,「話す・聞く・話し合う」能力の育成を学習目標とするとき,学生の交流を促し全員に個別学習を保証したいとき等にタイミングよく実施する。ただし,年間指導計画を立てる際には,前期,後期という単位で考えて適宜,適切な授業時数を配置することが重要である。
3.3 編成
グループ学習は,1人の教師が1学級の中をいくつかのグループに分けて行う。そこで,問題となるのがグループ編成の方法である。例えば,グループ成員の数,どのような成員のグループにするか等が問題となる。以下,平成20年度小山高専の建築学科1年生の場合を例として述べる。
(1)成員数:1学級は40人編成である。グループ編成においては同数の成員が望ましいと考えると,4人編成10グループ,5人編成8グループ,8人編成5グループの3通りが考えられる。しかし,実際には成員数が40人でない学級や授業に欠席者がいる場合があり,グループ成員数を同数にできない場合には柔軟に対応する(後述)。
(2)基準:基準としては,出席番号順や座席の隣接状況を基準に編成する場合(異質集団),能力別に編成する場合(等質集団),課題(テーマ)別に編成する場合の3通りが挙げられる 注5)。
(3)課題:同一の課題に対し全グループが取り組む場合と異なる課題に対し個々のグループが取り組む場合の2通りがある。前者はグループでの討議や練習が活動の中心となり,後者はグループでの調査や研究が活動の中心になる場合が多い。
(4)座席配置:普通教室におけるグループ学習の場合,座席は隣接する机を互いに向かい合うように移動させて行う。図3参照。図3 座席の配置
さて,実際の話し合いや討議においては,経験上,6人以上のグループの場合,一人あたりの発言の回数が少なくなり,またグループ意識(仲間意識)が希薄になりやすく機能的でもないと思われる。したがって,グループ編成は4人1グループを基本とし,学級成員数,欠席者および座席の隣接状況等により部分的に3人または5人のグループを編成することがあってもよいとする。
なお,従来,グループ編成に際しては,常に学習の目標,学習者の個性,人間関係等を十分に考慮すること,グループ編成をこまめに変更すること等が留意点として挙げられる。しかし,ここでのグループ学習が一斉学習を補完するものであり,実施回数も前期,後期に単発的に数時間行うものである場合,特別の事情がない限り,学級の座席配置を基準とする簡便性を優先したグループ編成を行うことにより,上述の留意点には特に注意する必要がないものと考えている。
3.4 展開例
(1)国語総合:井上ひさし「ナイン」
以下に示すのは,学習指導計画(全7時間)のうちの本文読解が終了した後の第6時に実施したグループ討議活動の例である。
なお,第7時にはグループ発表,教師によるまとめを行った。
①学習プリントの配布:初発の感想の中で,学生が抱く疑問を調査したところ,およそ次の2点に集約できる。ウは筆者が加えた。
ア 新道少年野球団の主将で4番捕手の正太郎はなぜ詐欺(悪)をはたらくまでに変貌したのか。
イ 正太郎に欺かれた投手の英夫や常雄たちナインはなぜ正太郎を許すのか。それほど新道少年野球団ナインの友情(絆)は固いものなのか。
ウ この小説で「西日」及び最終段落はどのような意味を持つ存在だろうか。特に,「西日」は何を象徴していると考えられるか。
以上の3点とグループ成員名の記入欄を設けたB4版学習プリントを準備する。
プリントには各設問に「自分」と「グループ」の解答を記入する空欄をとり,さらに次の評価項目を加えた。
(ⅰ)自分やグループの考えは十分に書けたか。(ⅱ)話し合い・討議に積極的に参加できたか。(ⅲ)全体発表会で他の発表を真剣に聞けたか。
これらを1~5の5段階で記入する欄,また今回の活動の総合評価を文章で記述する欄を設けた。
②個別学習:各設問に対する自身の解答(「個の解答」)を個別に10分間程度で記入する。
③ペア学習:隣席の学生ペア(都合で3人,5人の場合も生じる。前述)で「個の解答」を出し合い,意見交換を行う。
④グループ編成:教師の指名により学生は座席を移動して図3のようなグループを作る。その後,成員名を互いに確認しプリントに記入する。
⑤連絡・指示:事前に,グループ学習(討議)の時間は約20分間で,順に「個の解答」を発表すること,図3の座席1番が司会,4番は班の発表者になること,グループとして各設問の解答をまとめること,記録は各自が行うこと,何か問題があれば挙手すること等の連絡・指示を行う。
⑥観察・助言:各グループ成員は討議に参加しているか,進行具合はどうか,討議内容はどのようなものか等について教師は机間巡回して観察し,必要に応じて助言・指導を行う。
(第7時)
⑦全体発表会:教師の司会により,先のア~ウの設問ごとに逐次,計10グループの各発表者が「グループの解答」を口頭発表する。
⑧まとめ:教師が発表内容を整理した後,学生は個別に今回のグループ学習についての評価を行う。
以下に示すのは,入門期の古文の音読練習にグループ学習を用いた例である。1時間配当。
①リレー読み:題名は教師が読み,以下,本文を句読点で区切り,順次,学生がリレー式に読んでいく。延べ42人が音読することになる。
②範読:教師が全文を範読する。
③個人読み:学生が個別に全文を3回音読する。
④ペア読み:隣席の学生とペアを組み,①のリレー読みを交互に行う。読む順番を入れ換え計2 回音読することになる。このとき,古文音読上の誤り(語中や語尾のハ行音や「む」の読み等)が自然な形で修正されることが多い。
⑤グループ読み:教師の指示で,隣席による4人グループを編成し,成員全体で音読する。成員が調子を合わせて,大きな声で正確に 3回音読する。このとき,古文音読上の誤りがグループ内で一掃される。また,音読のリズムを体感し味わいながら,グループ成員同士の結束が実感できる。
⑥全体発表会:本文を前半と後半に分け,グループ別にその場で立ち音読を披露する。教師は各グループの音読について短い講評を行う。
⑦個人読み:教師は家庭での復習読みを指示し,次時の冒頭で数名を指名し音読させる。
3.5 ペア学習
本稿ではペア学習を最小の集団学習とし,グループ学習に含めている。ペア学習は,個別学習をグループ学習へと円滑に移行させる機能を持つが,それ自体,簡便かつ有効なグループ学習である。 例えば,教材を読んだ初発の感想・印象・意見・疑問をノートに書かせた後,すぐに発表させるのではなく,隣席同士のペアを組ませ,相互に口頭発表,ノート交換をさせる 注6)。また,内容読解や国語知識に関する質問を一度ノートに書かせる個別学習を行わせた後,同様のペア学習を行い,その後,学生による自発的発表を促したり,教師と指名学生との問答法を用いたりする。そのような活動により個別学習をグループ学習,一斉学習へと高めることができる。同時に,学生一人ひとりの個別学習を強く促す効果も期待できる。
4.グループ学習の評価
従来,グループ学習の長所として以下のようなことが指摘されている 注7) 。
(1)学習への参加:全員が気安く発言でき,自発的・意欲的な学習経験ができる。
(2)共同思考の成立:他者との交流により思考・認識が深さと広さを増す。
(3)社会性の育成:独善的な態度・意見が改められ,他者を理解し,仲間意識が培われる。
ここでは平成20年度小山高専第1学年3クラス(電気情報・物質・建築の各学科)で行ったグループ学習(3.4参照)に関する評価を示しながら,グループ学習の効果について考察する。 まず,A考えを書く個別活動,Bグループ討議での話し合う活動,C全体発表会での聞く活動,それぞれの自己評価の平均点を表1に示す。概ね良好と言えるが,「話すこと・聞くこと」領域であるB,Cがやや高い評価点となっている。
表1 グループ学習の評価(110人分,5点満点)
評価項目 |
平均点 |
A 自分やグループの考えは十分に書けたか | 4.1 |
B 話し合いに積極的に参加できたか | 4.3 |
C 発表会での意見を真剣に聞けたか | 4.4 |
次に,文章によって記述されたグループ討議の評価内容を整理すると,次のようである。
ア 学習意欲への刺激:グループ討議は高専では初めての経験だったので,普通の一斉授業と違い,新鮮な感じでおもしろかった。
イ 他者との出会い:自分の意見とは異なる他者のいろいろな意見や他のグループの意見は,とても興味深く,それらが聞けたことは楽しく,有意義に感じられた。
ウ 真剣なコミュニケーション:いつもと違い,自分から話し,真剣に聞いてもらい,自分も不思議なくらい人の話をまじめに聞けた。
エ 内容理解の深化:討議することで,自分の考えの不足が分かり,いろいろな視点から考えられて思った以上に内容の理解が深まった。
オ 反省したこと:もっと教科書をよく読んでおくべきだった。もっと深く考えて,自分の考えを積極的に話すべきだった。人の話をよく聞かないとうまく整理してまとめられなかった。
以上,今回のグループ討議は全般的に良好な活動であったと思われる。それは評価の文章中に,「とてもよかった」「参考になった」「勉強になった」「おもしろかった」「楽しかった」「興味が持てた」「いいことだ」「充実した時間だ」等の肯定的な表現が多く見られたことからも分かる(否定的コメントはなし)。さらに「今度はクラス全体で,このような話し合いをしてみたいと思った」「またこんな機会があるといい」と記す学生もいた。
なお,上記オの反省点も見方を変えれば,グループ討議を経験したことで「教科書をもっとよく読み,深めた自分の考えを持ち,それを積極的に他者に十分に伝え,自分も他者の考えをよく聞き取り,うまく整理してまとめられるようになりたい」と思うようになったと解釈することができる。これは自己の学習に対する取り組み,コミュニケーション能力の不十分さを自覚し,学習への新たな意欲を抱く動機を得たのだとも言えるだろう。
最後に,評価については,コミュニケーションスキルに焦点を当てた評価,評価力を育成する評価を行うこと等が課題として残されている。
そこで,本稿ではグループ学習がそれらの不足を補う学習活動の一つであり,学生に他者と討議することの重要性を認識させ,楽しさと反省を経験させる,その結果,学習意欲は刺激され向上するものであることを示した。
なお,コミュニケーション能力育成のためのディベートやプレゼンテーションにおけるグループ学習,「書くこと」の学習におけるグループ学習等についての考察は今後の課題である。
参考文献
1) 井上次夫:「読み」を動機付ける授業研究-漱石「こころ」を例として-,高専教育,26,pp.303-308(2003)
2)『国語教育基本論文集成』25,明治図書(1993)
3) 日本国語教育学会:『国語教育辞典』,朝倉書店(2001)
注記
注 1) 形態論における学習形態と指導形態は主に立場の違いを反映したもので,実際の授業(学習指導)の上ではその内実に大きな差はないと言える。参考文献2), p.368
注 2) 参考文献3), p.14
注 3) 参考文献3), p.96
注 4) ペア学習は,小学校・中学校では常態化しており,それを受けた高専でのペア学習の実行は有益である。
注 5) 参考文献2), p.260
注 6) ノート交換の場合,相手の解答を読んだ証拠として自らの署名を記入させ,簡単なコメントの記入を課す。
注 7) 参考文献2), p.180,286,299