課外活動の有効性を認識したため,その有効性を授業に反映させ実践している[
注4],[
注5]。函館高専機械工学科の創造演習Ⅱ・Ⅲでは,2年生2名と3年生2名の計4名でチームを構成し,与えられた課題あるいは自ら設定した課題を実現するためのミニロボットを製作するという内容で,構想設計から加工,組立,調整といった一連のものづくりを体験するカリキュラムとなっている(図2)。
図2 創造演習競技風景
この授業の中で,異学年が同一チームとなることで,自然な役割分担ができる。即ち,3年生は,リーダーあるいはサブリーダーとしての立場となり,目標を達成すべく必死に取り組むことになる。また,2年生は,指示待ちの状態となり冷静に観察できる環境となる。次年度は,2年生は3年生となるため,経験を生かして活動できることになる。
この授業を通してある面では楽しみながら種々の経験をし,達成感あるいは敗北感を味わうこととなる。そして,今の自分が出来ること,出来ないことを認識し,そこから意欲がうまれ,さらに興味を持って取り組むことができるという良い循環がうまれてくる。さらに,異学年との共同作業や議論を通して,創造力,コミュニケーション能力が育成されている。
課外活動は,前述の通り,学生の能動的な活動であり,それによりリーダーシップ,対人マナー,時間の有効利用,生活目標の設定などが向上するという報告もされている[
注6]。自身の取り組みとしては,硬式野球部の指導教員として21年間,メカニズムフェスティバル(函館市民特に子供を対象とした行事)の開催を10年間,継続している。そのほか,ロボコン,3次元造形コンテスト,ビジネスフロンティアカップ(函館市主催の行事)など種々の行事への参加を通して,学生の人柄教育を実践している。これらの活動において,実施計画立案と実行,目標遂行,チームメイトとの交流,指導者や他チーム等との関わりができ,目標遂行能力,プレッシャー対処能力,対人能力,集団行動能力などが向上している。その準備から実施によって,学生がいろいろなことへ挑戦する前向きの姿勢を身につけることとなる。
技術者教育としては,知識(技術)教育と人柄教育とが必要であり,教員がそれらを識別して実践することが重要である。知識教育としては,体験に裏付けられた知識獲得が重要であり,これは,実験・実習・行事などにより培われる。一方,人柄教育としては,様々な体験行為を通した人との関わりにより,コミュニケーション能力が養われ,その中で意欲向上も図られる。そして,その前向きの姿勢が知識の獲得にも有効な働きをすることになる。したがって,課外活動を推進することにより,学生の意欲向上を促すことができ,そのような前進的な循環を生み出すことが期待できる。
注1) 二橋岩雄:「技術者教育への期待」第1回高専における設計教育高度化のための産学連携ワークショップ特別講演
注2) 鈴木誠:「初年時教育の新展開」キャンパスコンソーシアム函館戦略的大学連携シンポジウム2009」講演資料集 (2008)
注3) 林成之:「勝負脳の鍛え方」講談社現代新書
注4) 山田誠,本村真治,近藤司,浜克己:「異学年・科目間連携型創生教育の実践{第2報}」,平成19年度精密工学会北海道支部学術講演会講演論文集
注5) 本村真治 山田 誠 古俣和直 川上健作 近藤 司 川合政人函館高専機械工学科における創生教育の取り組み(第2報)国立高等専門学校協会 高専教育 29 (2006) pp.249-254
注6) 浦田清:「本校学生のライフスキルについて」函館工業高等専門学校紀要