日本語コミュニケーション演習プログラム(【自己を語る】)
◎「自己推薦書を書く」実践プログラム 試案
焼山廣志


今回は、本校4年次で取り組んでいる「日本語コミュニケーションI」「日本語コミュニケーションII」の授業の一端を紹介する。この授業では、5年次の就職活動及び進学受験時に求められる必要書類の書き方等の実践に直結する知識の習得を最大の目標として行っている。「日本語コミュニケーションI」が4年次前期100分15回全学科必修科目、「日本語コミュニケーションII」は、4年次後期100分15回自由選択科目(20~30名に受講人数を限定して行っている)である。前期は専任2名、非常勤1名の3人体制で同一カリキュラムで(週1回非常勤講師を交えて教科会を開き、進路、教授内容の調整を行っている)実施し、後期は焼山単独の授業である。本校専任の菱岡憲司と共著の自主テキスト『日本語文章表現法 講義録・演習レポート集(2010)』を全員に持たせ、このテキストに沿って授業を展開している。その授業内容は次の三項目を習得目標としている。

「(1)履歴書・自己推薦書の書き方」「(2)手紙文・葉書の書き方」「(3)敬語の使い方」である。今回はこの中の「(1)履歴書・自己推薦書の書き方」についての取り組みに絞って紹介する。

「日本語コミュニケーション向上プログラム」の構築に向けての共同研究を行っている中心メンバーの一人、豊橋科学技術大学の中森康之准教授が「単なる『スキル』ではなく、『主体性』などといった内面に関わるコミュニケーション能力を養成するためには、「自分(の主観)を語ること」が非常に有効である」と述べているが、焼山もまさしく本校で「(1)履歴書・自己推薦書の書き方」を実践させた時、受講生の多くに欠如していることが、これであることを痛感している。つまり「自分を語る」ことが出来ない、あるいは不得手なのである。そこで、昨今の企業が求めている「自己推薦書」のようなものは、ハードルが高すぎて、これにいきなり挑戦させるのは無理があるのである。

そこで、今から紹介するような「ウォーミングアップ」を伴なう教授カリキュラムを考案し、実践している。

1.1 【第1段階】自分を振り返る

「(1)あなたが学生時代に最も熱心に取り組んだことは何か」について400字程度の文章を書かせる。

この原稿を全員に提出させ、個別に添削を施す(図1)。そしてそれを必ず清書させる。

この清書原稿を「1.4 【第4段階】」執筆時の基礎資料とさせる。

図1
図1

1.2 【第2段階】「自己PR文書」の書き方~自分の性格を分析する~

自分の性格の分析文を作成させる。この課題には多くの学生が、「どう書いて良いのかわからない」「自分の性格をうまく文章に整理できない」「自分の長所がよくわからない。(もしくは)自分の長所はない」等の嘆きと、途方に暮れた態度を取る。

そこで、以前にこの自己分析文を書いた学生の例をワープロ原稿にして、それに担当者が添削した例を板書し、それを受講学生に書写させる。これによりどのように書けば良いのかの方向性を学生なりに見出せるようになる。

例(学生の文章)

私が自覚している性格は、人身知りしないところです。なので、初対面の人でもくだけた話ができ、そのおかげで、今まで友人作りには困ったことがありません。しかし、普段気をつけているのですが、話が盛り上がりすぎると、押し入った話をしてしまい、地雷を踏むなんてことも少々あります。

添削例(担当者の添削例)

私が自覚している性格は、人見知りしないところです。この性格のおかげで、初対面の人にも臆することなく話が出来、今まで友人作りに困ったことはありません。

しかし、時として周りの雰囲気に流されてしまい自分を失うことがあります。このことに今は一番気をつかい改善しようとしています。

この書写の後、受講者全員に「自分の長所をずばりと書く」という課題で、400字以内の自己分析文を作成させる。

これを個別に添削を施し、清書をさせて、次の「1.4 【第4段階】」執筆時の基礎資料とさせる。

1.3 【第3段階】「自己推薦書」の書き方(導入)

「自己推薦書」とは何かを学生に理解させることを導入として行う。樋口祐一の『ホンモノの文章力』 注1)で論じられているものを引用し、「型」を説明する。「型」として次の4部構成の書き方を提示する。

  • 「(1) 自分の長所をずばり書く」
  • 「(2) 自分の長所の裏付けを書く」
  • 「(3) 自分の長所がいかに仕事・学業に適しているのかを書く」
  • 「(4) 会社・大学に入るに当たっての覚悟を書く」
この型に沿った模範例文を書写させる。(図2)

ここで学生は、どう<自分>のPRをすればよいのか、その概要がつかめるようになる。

図2
図2

1.4 【第4段階】「自己推薦書」の書き方(下書)

この段階にいたって実際に「自己推薦書」の執筆を学生一人ひとりに実践させることになる。

但し、受講者が4年次であることを考慮し、「1.3 【第3段階】」で説明した「型」の「(3)自分の長所がいかに仕事に適しているかを書く」「(4)大学・会社に入るに当たっての覚悟を書く」の言及は不要とし、「(1)自分の長所をずばりと書く」「(2)自分の長所の裏付けを書く」のみの内容で、600~800字程度の文章を作成させる

この時、「1.1 【第1段階】」で清書させた原稿、及び「1.2 【第2段階】」で清書させた「自己分析文」基礎資料として使いながら一文を完成させるように助言する。

この学生の提出原稿に一人ずつ添削を施し、個別に面談をしながら返却する。そしてそれを再度清書させて提出させることで、この一連の取り組みの完成とする(図3)。

図3
図3

1.5 成果

<働くことへの動機付け>は、技術者養成を本校の教育目標としているだけに大半の学生が持ち合わせている。その一方で、<自分をどのように表現・PRしたらよいのか>という単なる表現スキルに止まらない内面の問いかけが欠落していた事を自覚し、また、この授業の取り組みを通し自分を客観的に見つめる契機になったと多くの受講生が評価している。

[編集] 出典 脚注
注1)樋口祐一『ホンモノの文章力 自分を売り込む技術』(集英社新書)pp.105-133